ラズパイDACにクロック注入ができるようになったので、手持ちのクロックの音質を確認しやすくなりました。手持ちクロックの印象をまとめておきます。

まず筆頭は、Neutronstar2。昔、クロック界?で一世を風靡した、LC Audioの系列の最新製品です。

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 基板上にSPXOを搭載し、簡易温度調整機構を設け、気合の入った定電圧回路でクロックを駆動しています。比較的スッキリとした音質ですが、空気感がよく出るので、インパクトのある音がします。電源投入からの立ち上がりも、他の2つに比べると早いです。

次に来るのは、広島市のオーディオショップ、サウンドデンの開発したDTUクロック。

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内部は、廉価版として販売されているDTDと回路的には同じになります。違うのは、ハイエンドのマイカコンデンサを採用していること、シールド効果の高い銅ケースを使用していること、です。音は音楽性が高く、また、音調としてはアナログシステム的な音となるため、最終目標がアナログの音、ということであればこのクロックを選択するのも良いかと思います。

そして、最後は、NDKのDuCULoN。

EEG-6rJUEAMwYvOのコピー

クリスタルを恒温槽(オーブン)で加熱し、硬さを絶妙な状態にコントロールすることで、澄んだ響きを実現するOven Controlled XO(OCXO)を採用しています。さらに、DuCULoNでは、完全な同一周波数のXOを選別し、一つを発振用、もう一つを共鳴用として、共鳴させた信号のみを出力するダブルXOシステムを採用し、特に高周波におけるノイズが極限まで抑制されています。 電源投入直後はややもっさりとした印象ですが、次第に「自然」としか言いようがない音に変化してきます。


オーディオ再生におけるクロックの役割は、
①再生速度のコントロール (可聴帯域以下の信号のゆらぎの抑制) = 再生クロック
②DA変換のコントロール (可聴帯域以上のΔΣ変調による信号変換の精度保持) = DAクロック
の2つがあると思っています。

①は再生速度そのものの変化で、アナログ再生におけるターンテーブル回転の安定度に対応すると思います。重量級のターンテーブルでは、回転が安定するため、再生音も安定します。軽量ターンテーブルでは、針の抵抗や音楽信号の量、回転動力源のゆらぎなどにより、回転がブレます。また、アナログ盤の共振などにより、何らかの「響き」が乗ったりします。そのため、可聴帯域周期での再生速度の変化は、再生音の安定性に影響すると考えています。

②はデジタルをアナログ信号に変換する際に問題になります。アナログ信号の生成を抵抗の抵抗値の組み合わせだけで表現する場合(マルチビットDA)の場合と比較して、アナログ信号をオンとオフのそれぞれを時間ごとに切り替えて再生する場合(ΔΣ変換)、時間の精度が直接的に出力の信号の精度に影響を及ぼすことになります。このため、可聴帯域以上の時間精度の乱れは再生音の精度に影響することになります。

近年、外部クロックとして、10MHzのクロック源を用いたマスタークロックが多数販売されるようになっていますが、これらは、基本的に①再生クロックのコントロールを行っていると考えられます。そして、②DAクロックとして使用するのには不向きと考えられます。その理由として、DA変換にはより高い周波数(40MHz以上)が必要となる場合が多いこと、また、再生する信号が44.1kHzや、48kHzを基本としたものであるため、理想的には、それらの周波数を整数倍したクロックで変換を行ったほうが時間精度が高くなること、が挙げられます。
結局、再生クロックとしてはともかく、DAクロックとしてはマスタークロックの10MHzをそのまま使用することは容易ではなく、また、10MHzを逓倍回路で周波数を上げて使用しても、逓倍回路の品質がそのままクロック品質となってしまうため、はじめから高周波なマスタークロックを使用したほうが有利となり、あえて外部から10MHzを供給する魅力が半減してしまいます。
(なので自分は、44.1kHz、48kHzの整数倍のクロックにこだわって、クロック換装をしています。)


今回挙げた3つのクロックは、どれも電源や設置条件で音が変わります。なので、自分としてはクロックはそれ自体で楽器なんだと思っています。

さて、次は何をしようかな。クロックの世界は広大ですからね。