最近の新製品情報で、Steady Clock FS という名前を目にしました。

http://www.ikebe-gakki-pb.com/new_product/?p=37025

こちらを参照すると、

RMEの新たなリファレンスとして誕生したADI-2 Proは、最大サンプルレート768kHzならびにDSDの再生/録音にも対応したAD/DAコンバーターであるだけでなく、USB DAC、USBオーディオ・インターフェイス、さらにハイエンドなヘッドフォン・アンプとしても最高品質を提供するデバイスです。その限りなく透明な音質と独自のユーザー・インターフェイスにより、マスタリング・スタジオや音響測定などのプロフェッショナルな現場だけでなく、世界中のオーディオファイルにとっても究極のツールとしてお使いいただけます。

◎さらなる進化を遂げたSteadyClock FS

数多くのRMEデバイスで高いクロック精度そして驚異的な低ジッターを実現する独自のクロック技術であるSteadyClockは、レコーディングやPAなど数々の現場でプロフェッショナル・ユーザーから高い支持を獲得し、RMEの哲学である「色づけしない透明なサウンド」を実現する重要な技術です。その完成度は非常に高く、最初のSteadyClockからSteadyClock IIIまで、基本設計とそのパフォーマンスには大幅な仕様変更がされていない事がその事実を裏付けています。内部クロックを使用した場合も外部クロックを使用した場合も同じ音質での再生が可能で、数多くのRMEデバイスでの長年に渡る動作実績により賞賛を得ているテクノロジーです。

新たに開発された「SteadyClock FS」でもSteadyClockの基本設計とパフォーマンスはそのままに、アナログPLL回路のアップデートを行ない、DDSとPLLの両方に低位相雑音水晶発振器を参照させることによりさらなるセルフ・ジッターの抑制に成功。SteadyClockは常にPLLモードで動作しますが、ジッターの仕様は通常マスター・クォーツ・クロック・モードでしか見られないレベルに達します。アップデートされた回路をドライブさせる低位相雑音水晶発振器は非常に高い周波数安定度を誇り、その仕様はピコ秒を超えるフェムト秒 (Femto Second) の領域に達し、そのことが「SteadyClock FS」と言うの名前の由来にもなっています。

と、ワクワクする文章が並んでいます。なんかとてもすごそうで、もうクロックなんかやめてこれを買ったらいいんじゃないか?そう思わせる文章です。

でも、文章を読んでもあまり内容が伝わってきません。一体どういうシステムなのでしょうか?
本国サイトを参照してみましょう。

https://www.rme-usa.com/steadyclock-fs.html

About Jitter 

ジッターについて

In digital audio, the clock frequency is an essential factor, as it creates the correlation between the audio bits and the time reference. Unfortunately, the clock frequency is not always as stable as desired. Small fluctuations of the clock frequency are referred to as "jitter", measured in nanoseconds (ns). They are the natural born enemy of any digital audio transfer. The effects of jitter on the audio signal are many - from a somewhat rough sound quality to diminished treble localisation to clicks and dropouts in extreme cases. To solve these issues, RME have developed a completely new technology for synchronization and jitter suppression in digital audio signals - SteadyClock.

デジタルオーディオにおいては、クロックの周期精度は重要な要素です。クロックは時間情報に基づいてデータ再生を行うのに使われます。しかし残念なことに、クロックはいつも望むほどの精度がある、というわけではありません。クロック周波数の微小なゆらぎは「ジッター」と呼ばれ、ナノセカンド(ns)単位で測定されます。このジッターの存在は、デジタルオーディオ再生の根源的な悪であるといえます。ジッターがオーディオ再生音に及ぼす影響は多岐にわたり、全体に音質が荒くなる、といったことや高域の定位が曖昧になったり、音が途切れたりするといったことまで起こります。これらの問題に対処するため、RMEは全く新しいジッター抑制のためのデジタル信号同期技術を開発しました。それがSteady Clockです。(訳者注:ここドヤ顔してる。)

FS-Jitter

画像:Steady Clockの効果 上:Steady Clockあり 下:Steady Clockなし

The Evolution of SteadyClock

Steady Clockの進化

SteadyClock has originally been developed to gain a stable and clean clock from the heavily jittery MADI data signal.The embedded MADI clock suffers from about 80 ns jitter, caused by the time resolution of 125 MHz within the format. Common jitter interface values are 5 ns, while a very good clock source will have less than 2 ns. Using other input sources like AES, SPDIF, word clock or ADAT, one most probably never experiences such high jitter values.

Steady Clockはもともと、超ジッターの多いMADIデータ(訳者注:RME社が開発したオーディオデータとMIDI楽器演奏情報を同時に転送するデータ形式)から高精度なクロック信号を抽出合成するために開発された技術です。MADI信号に含まれるクロック信号は125MHzという信号周波数の影響で80nsのジッターが発生することは原理的に避けられません。一般的なジッター量は通常5ns程度、高精度通信のジッターでは2ns以下に抑えられています。MADI以外の、AES、SPDIF、ワードクロック信号、ADATなどを使用している場合には、MADIのような過大なジッターを含む信号を処理することはありません。(訳者注:MADIはジッターが多い信号だ、と言いたい。)

But SteadyClock is not only ready for them, it would handle them just on the fly. SteadyClock reacts quite fast compared to other techniques. It locks in fractions of a second to the input signal, follows even extreme varipitch changes with phase accuracy, and locks directly within a range of 28 kHz up to 200 kHz.


Steady Clockはジッターに対し受け身で対応するだけではありません。ジッターをリアルタイムで処理できる技術です。Steady Clock は他のジッター抑制回路と比較してより迅速に入力信号に反応し、僅かな時間で信号同期を完了し、入力周波数の大きな変動にも正確に、28kHzから200kHzまでの広い範囲の周波数でダイレクトに同期をとることができます。 

The SteadyClock technology of RME's latest products guarantees an excellent performance in all clock modes. Its highly efficient jitter suppression refreshes and cleans up any clock signal, and provides the clock signal as reference clock at the word clock output. At the same time, analog conversion is performed on a guarateed level of highest quality, completely independent from the kind and quality of the used reference clock. The cleaned and jitter-freed clock signal can be used as reference clock in any application. And the quality of the external (input) clock doesn't matter anymore.

RME社が開発したSteady Clock テクノロジーはあらゆるクロックデータに対して十分な精度を保証する最新のテクノロジーです。そして、その結果として、クロック信号をワードクロック信号として他機器へ出力することも可能なレベルに達しています。さらに、リファレンス(訳者注:入力された信号の)クロックの精度に関わらずDA変換の精度も非常に高いものになっています。生成されたクロック信号の精度は十分高いため、クロック信号として多様な信号処理に使用することが可能です。改めて、Steady Clockのジッター抑制機能を使えるば、どのような精度の信号が入力されても大丈夫、と申し添えておきます。 

SteadyClock FS - Excellent performance, redefined 

Steady Clock FS - 更に向上したパフォーマンス

Today SteadyClock is still the same, with a few small improvements in the latest FS version, like even more efficient filtering, and a design based on a super low jitter reference clock. The ADI-2 DAC was the first device in RME's range with SteadyClock FS. There is not much to improve with SteadyClock, it has earned its accolades over years of flawless operation in numerous RME devices, guaranteeing that using the internal clock will produce exactly the same sound as when using an external one. SteadyClock highly rejects jitter and handles all digital interface formats in an exemplary way.

現在のSteady Clock はいくつかの改良をへてFSバージョンとなり、ジッター抑制は高度化し、基準クロックはより高精度となっています。しかし、その基本コンセプトは変わっていません。ADI-2 DACはRME社の製品としてSteady Clock FSを搭載した最初の製品となりました。過去のRMS社の製品はSteady Clockの能力で、生成クロックのみで、外部マスタークロックと同等の音質を実現したと高く評価されてきました。今回のSteady Clock FSは、このSteady Clockから更なる性能の改善を実現しています。Steady Clock機構ははジッターを完全に抑制し、すべてのデジタル信号をあるべき姿で処理することができるようになる技術です。

With SteadyClock FS the focus was put on reducing the self jitter of SteadyClock to new lows, by improving its second, analog PLL circuit, and referencing both Direct Digital Synthesis and PLL to a low phase noise quartz crystal. The self jitter measured through DA conversion now reaches levels that usually are only available in master quartz clock mode, while SteadyClock still always runs in PLL mode - no matter if internal or external clock, sound is exactly the same (again). The low phase noise oscillator driving the updated circuit reaches jitter specs lower than a picosecond (ps), an area called FemtoSecond. Hence SteadyClock FS.

Steady Clock FS の開発においては、Steady Clock で問題となっていた内部ジッターの問題に対し、2つ目のPLL回路を導入し、高精度水晶発振器とPLL回路、デジタル信号処理参照回路をも組み込むことでさらなる高精度を実現しました。そのため、どのような外部クロックの変動があっても、Steady Clock FSを使用した回路では通常のPLLを用いた回路構成のレベルを超えて、水晶マスタークロックを用いた場合と同等の精度を維持することが可能です。最新の回路で駆動する低ノイズ発振器は、フェムトセコンドの領域からピコセコンドの領域にまで及んでおり、そのため我々はそれをSteady Clock FSと名付けました。

FS-Sample

画像:波形に対しフェムトセコンド領域でジッター抑制を行うことでジッターの少ない波形再生を行うことができる。ジッターはナノセカンド、ピコセカンド領域以下に抑制され、フェムトセコンド領域に到達している。

Full Range Capture without compromises

あらゆる領域に妥協しない姿勢を

RME Audio has always been completely focused on performance, the company's products are the first choice of audio professionals around the world. Precise German engineering and a relentless pursuit of sonic perfection will ensure the highest quality results — no matter what the application.

RMEは一貫して製品のパフォーマンスに注目してきました。そして、RMEの製品は世界中の音響プロフェッショナルの第一選択として選ばれています。ドイツの正確無比な製品設計と揺るぎない音響性能への追求が結果として、あらゆる領域で最高のクオリティを生み出すことを可能にしました。

RME's mic preamps and converters are designed to capture every nuance of a performance, with no added sweeteners. Every detail is captured and no detail is lost. Neutral conversion allows you to hear the performance exactly as it is in the room — giving you the confidence you need that what you hear in the control room will translate to the final product.  Digital format conversion in RME products are done without any loss or degredation, and SteadyClock ensures your sonic image will never experience degredation.

RMEのマイクプリアンプとコンバーターは、妥協を許さず、あらゆる演奏のニュアンスを記録するようデザインされています。演奏情報はありのままにすべて録音されます。そして、変換器はその高い性能によって演奏された部屋にいるかのような演奏記録を可能にし、そして、録音エンジニアが自身を持って録音作業ができるようにする手助けをしています。RME製品のデジタル変換精度も非常に高く、Steady Clockの能力と相まって、情報の欠落や色付けとは無縁となることでしょう。

In today's music creating environment, users should never have to tolerate sub-standard reliability and performance — whether the goal is to capture a multi-piece orchestra in a commercial recording environment or a demo in a bedroom studio. Where other AD/DA converters and preamplifiers fail, RME Audio delivers the ultimate reliability, clarity and detail time after time, year after year.


現代の音楽制作シーンにおいて音楽録音する場合、オーケストラ録音でも、ビデオ制作室でも、そして、自宅での宅内録音であっても、音の悪い音響機器は使われるべきではありません。他社のコンバーター、プリアンプのことは知りませんが、RME社はこれまでも、これからも、完璧な製品をお届けし続けます。

(翻訳終わり)


つまり、入力信号に対し、PLLを工夫してきれいなジッター信号を作ったのがSteady Clock。
さらに水晶クロックをリファレンスとしたのがSteady Clock FSのようですね。
とすると、技術的にはAIT DACが搭載している、入力信号に応じてVCXOを連動させて、DACを入力信号に完全同期させる技術と同様のものだと推測されます。

自分が目指している、低周波ジッターの抑制には、これはあまり向かないような...
RMEの製品は、自分向きではないようでした。(完)

(翻訳してて思ったけど、あえてわかりにくいようにボカして書かれているんじゃ?この英文。)